アメリカの核融合スタートアップ企業のヘリオン・エナジーは5月10日、2028年までに稼働開始を目指している核融合発電所で発電した電力をマイクロソフトに供給する契約を締結したと発表しました。

ヘリオン・エナジーは、2013年に設立した核融合スタートアップ。これまでに、プロトタイプを6基製造してきました。同社によると、現在7番目のプロトタイプを建設していて、2024年にも発電能力を実証。2028年までに、50MW(メガワット)以上の発電能力をもつ核融合発電所の稼働を計画しています。

  

ヘリオン・エナジーはITERとは違い「電磁誘導の法則」で発電するんだそうです。

原料には、重水素とヘリウムの同位体である希少なヘリウム-3を使用。原料をそれぞれプラズマ化したあと、装置の両端に設置した二つの加速器で時速100万マイル(時速約160万キロメートル)にまで加速し、装置中央で衝突させることで核融合反応を「非連続的」に発生させます。
核融合反応によって生じたエネルギーの影響でプラズマが膨張し、装置内の磁場が変化。この時、「ファラデーの電磁誘導の法則」(磁石をコイルに近づけたり離したりする際に電流が生じる現象)により電流(誘導電流)が発生します。この電流を取り出すことで、電力として利用するんだそうです。

  Helion Energyの発電原理(You Tube)

ヘリオン・エナジーによると、この方式は炉の小型化が可能で低コストな点がメリットとの事。

ITERで考えられている核融合発電所では、最終的には核融合による熱で従来の発電機と同じようにボイラーを回す仕組みを想定しているので、ヘリオン・エナジーの発電方法とは大きく異なります。

ITERの場合、核融合反応を連続的に起こす(プラズマを長時間維持する)事や核融合反応を起点に熱を取り出す技術など、まだまだ課題が山積していて発電能力の実証までには至っていないようです。

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